ICTで地域課題の解決とビジネス化を目指す!
未経験から「TOPPANデジタル株式会社」のSEとなった大城さんと対談
「今やっと、やりたいことに出合えた。そんな実感があります」
新卒で入社した大手企業を退職し、2023年5月、TOPPANデジタル株式会社(同年10月に「凸版印刷DXデザイン事業部」より社名変更)の沖縄サテライトオフィス「ICT KOBO URUMA」に転職した大城柚木さん(仮名)。未経験だったシステムエンジニアとしての採用を勝ち取り、新たな挑戦を始めています。
前職時代に独学で始めたデータ分析の面白さと可能性に気づき、「安定よりも大切なことがある」と転職を決意した大城さん。彼女の転職活動に伴走した株式会社レキサンの玉城良樹コンサルタントが同社を訪れ、これまでの歩みやキャリアへの向き合い方について語り合いました。
柔らかで穏やかな語り口調と、データや数字を重視する冷静さを合わせ持ち、「才色兼備」という表現がしっくり似合う女性ですが、意外にも幼い頃から「夢なんてなくて、やさぐれていました」と笑います。
そんな大城さんが目標を見つけ、一歩を踏み出す原動力は何だったのかー。
これまでの歩みを振り返っていただきました。(2023年9月取材)
安心して議論できるから、自己効力感を得られる
玉城:お久しぶりです。転職されて約4カ月、新しいお仕事はいかがですか?
大城:すごく充実しています。SE未経験だった私を皆さんとても丁寧にフォローしてくださり、ありがたい限りです。でも実は…入社して1週間ぐらいのミーティングで、チームを凍りつかせる発言をしてしまったんです。ハレーションを起こしてしまったというか…。
玉城:いきなりのハレーション(笑)? 何があったのですか?
大城:詳細は省きますが、弊社が進めているプロジェクトについて、自分なりに感じた疑問や課題をドーンと突きつけてしまったんです。
玉城:転職1週間で、課題だと感じることを見つけたんですね。
大城:私は技術面ではまだ弱いので、「自分が持っている視点でバリューを出さなきゃ」との焦りがあったのだと思います。
玉城:確か前職時代にも、設備トラブルが発生した時に「何かしなきゃ」と独学でデータ分析を始め、最初は受け入れられなかったというエピソードがありましたね。前職も安定企業だったので、そのまま静観するという選択肢もあったわけですが…。
大城:「自分の価値を発揮したい」という気持ちが強いんだと思います。うまく答えられないんですが…とにかくバリューを出さないと自分の存在意義や充足感を得られないのだと思います。
玉城:なるほど。ハレーションはその後どうなりましたか?
大城:それが、議論はすごく白熱したんですが、ミーティングが終わって部屋を出た瞬間、皆さん気持ちを切り替えていて…驚くほど気持ち良くコミュニケーションが取れたんです。嫌な感情を持ち込まず、必要な議論をきちんと進められるので、すごく前向きに仕事を進めていけます。
玉城:素晴らしい文化ですね!
大城:お互いを理解し尊重しようという姿勢があるからこそ、議論も仕事も進めやすい。「このメンバーとなら頑張れる!」という気持ちに繋がります。なぜ今こんなに充実しているんだろうと考えると、「自分はここで頑張って結果を出せる」といった自己効力感が満たされているからだと感じています。
人生を変えた二つの経験
玉城:転職活動前には経済産業省のデジタル人材育成プログラム「マナビDXクエスト」に参加されました。
大城:前職時代にデータ分析の勉強を始めた時、教材を探す過程で見つけました。実践力が身につくと感じ、すぐに応募して参加しました。約半年間の経験が、自分の人生の選択を変えたと言っても過言ではありません。
玉城:人生を変える出合いとなったわけですね。
大城:マナビDXクエストでは、実際に企業が抱える課題について、チームで解決策を模索し提案します。私たちのチームに与えられたのは、ある印刷工場のスマートファクトリー化に向けた施策を考えるミッションでした。課題解決に向けた本質的な議論を重ねるプロセスがすごく楽しくて、「こんな仕事がしたい」と確信したんです。
玉城:前職時代にデータサイエンスの面白さを知り、マナビDXで課題解決の面白さを知り、それが現在の方向性を定める決め手となったわけですね。
大城:そうですね。それらの経験を通して、現場で役立つツールを作るには、アプリケーション開発の経験や実務を積まないとダメだと実感したんです。
玉城:そうして転職を決意されたんですね。
大城:マナビDXクエストを修了した後も、印刷業界でDXが進んでいるところがないか調べていました。すると何と凸版印刷がDXに力を入れていて、しかも沖縄に拠点があると知り、運命的なご縁を感じて玉城さんに相談しました。
玉城:年イチあるかないか、というぐらいドンピシャなマッチングでした(笑)。凸版印刷さんは生粋のエンジニアを求めていましたが、大城さんがご自身のITスキルを明示するポートフォリオを作成されるなど、果敢に挑む姿勢が評価されたのだと思います。
「やさぐれていた」という幼少期
玉城:大城さんにお会いした時の最初の印象は「大人しくて優しい人」でしたが、面談を重ねるうちに「あれ?羊の皮を被っている?」と感じるようになりました(笑)。実はすごく芯が強い。幼い頃はどんなお子さんだったのですか?
大城:私が住んでいた地域は経済的に厳しい家庭が多く、子どもの頃から「どうしたら豊かになれるのかな」と考え続けていました。スポーツや音楽の才能があったわけではないので、「学力しかない」と思い学業に励みました。
玉城:親御さんが教育熱心だったのでしょうか。
大城:全く違います。うちの家庭もやはり経済的に厳しく、親は身を粉にして働いていました。そんな姿を見ていて「家族の生活を支えるために、私が良い企業に入るんだ」と思うように。進学先を決める時も、確実に奨学金が取れて、良い就職口に辿り着けそうな学校を選びました。自分のやりたいことを、ずっとないがしろにしてきたわけです。
玉城:大城さんはご自身の人生に必要な道筋を立てて、その時々で戦略的に選択されてきたと感じます。小さい頃の夢は何でしたか?
大城:夢を持つ余裕なんてありませんでした。「やりがい」や「夢」を持てるのは、豊かな人たちだと思っていました。「生活にゆとりがないと夢を描く想像力や発想力すら持てない」と感じ、周囲への劣等感を抱いていました。なんと言うか…やさぐれていましたね(笑)。
「安定だけでは満たされない」と気づいた
玉城:幼少期の悔しさや劣等感をバネに勉学に励み、思い描いた通りの大手企業に就職されました。
大城:そうです。安定を求めて大手企業に入社したものの、「安定だけで満たされるわけではない」と気がついたんです。自分の力を発揮できない環境で働くことの苦しさを痛感しました。
玉城:実際に大企業に入社して働いた経験があるからこそ、「大切なのは安定だけじゃない」との言葉に説得力があります。
大城:安定している企業でも、社会情勢が変わったら経営が悪化することは当然あります。一度きりの人生なので、自分で道を切り拓く生き方をしたいと気がつき行動を始めました。
玉城:そして凸版印刷株式会社さんへの転職を勝ち取りました。
大城:今やっとやりたいことに出合えて、自分のやりたいことに初めて挑戦できているという実感があります。
玉城:それは本当に良かったです!
データを味方に道を拓く
玉城:前職の話に遡りますが、部署内の設備トラブルを機に独学でデータ分析を学ばれました。
大城:技術職なのに庶務的な仕事ばかりで、「このままで大丈夫なのかな」という不安が常にありました。入社3年ぐらい経った頃、担当する部署内で大きな設備トラブルがありました。原因が分からないままうやむやになりそうだったので、「データを分析したらトラブルの原因が分かるんじゃないか」と考え、データ分析を始めました。
最初はExcelを使っていましたが、大量のデータを分析するためにプログラミングも使うように。結果的にトラブルの原因を突き止めたのですが、当時は職場内にデータを見る文化がなく、受け入れてもらえませんでした。
それでも諦めず、幾つかの事例や実績を積み重ねました。発言力のある先輩が協力してくれたこともあり、徐々にデータを見る文化が部署内に根付いていき、同僚たちが「データは財産なんだね」と言ってくれるまでになりました。
玉城:巻き込み力を発揮されたわけですね!
大城:「自分は価値のあることをやっているんだ」という気概を持っていると、それが自分の支柱になると感じます。
玉城:物事を円滑に進めていく戦略ですね。
何にでもチャレンジしたい
玉城:入社されて4カ月。これからの目標をお聞かせください。
大城:飽くなき欲望が湧いています(笑)。地域課題の解決というミッションは、数字では結果を示しにくいという課題があります。その難しさをやり抜くのが自分の使命だと思っています。
玉城:数字で結果を示すことに、こだわっているのですね。
大城:せっかく採用していただいたので会社に貢献したい気持ちが強くあります。成果を出しやすい挑戦として、入社2カ月目に補助金の獲得に成功しました。ただ、それは事業としての根本的な解決策ではないので、私たちの取り組み自体をマネタイズできるようにしたいです。
玉城:地域課題の解決というテーマであっても、顧客から対価をいただける仕組みを目指したいということでしょうか?
大城:私たちは現在、漁業DXという大きな課題に向き合っています。漁業は近年どんどん就労者が減り、生産量も減っています。本当は行政が取り組むべき問題だと感じます。まずは私たちが実績を作って行政を巻き込んでいきたいと考えています。
玉城:ビジネス化ですね。
大城:はい。そして、そのミッションが一段落したら、顧客のバーニングニーズを刺激するような、人々が喉から手が出るぐらい欲しいと思える一般消費者向けのサービスを生み出すプロジェクトも手掛けてみたいです。
玉城:おぉ〜なるほど。大城さんはビジネス化とエンジニアとしての仕事は、どちらが好きですか?
大城:そうなんですよ〜。実は最近、「私はどこに向かっているんだろう」と悩んでいるところです(笑)。技術を磨きたくて転職したはずなのに、今は事業計画を練る時間が多いわけです。私の役割は何だろうと自問自答している最中ですが、役割を制限しちゃうと自分の可能性を狭めてしまうとも思い、「今は何でも挑戦してみよう!」という精神でやっています。
玉城:IT技術だけではなく、その先のマーケットにどうアプローチしていくかという視点でのお仕事、とても貴重な経験をされていると感じます。大城さんには技術もビジネス化も両輪で進めてほしいと個人的には思います。ご自分で課題を見つけて仕事をつくっていくところが大城さんの強みだと思います。
大城:すごく心強い言葉です! これからはコネクションを開拓して、現在の壁を越えたいと考えています。成果が数字として見えないと、自分の成長や企業の成長を感じにくいと思うので。
玉城:ご自分に厳しいですね〜(笑)。転職4カ月でやるべき方向性を見つけて、先を見据えて業務に落とし込める力は素晴らしいです。でもあまり、自分を追い込みすぎないでくださいね。
大城:自分の理想像と現在の自分にギャップがあるのが悩みですが…永遠の課題かもしれませんね。でも最近は、職場の皆さんに頼ることも覚えました。ジムにも通い始め、何も考えない時間を作るようにしています。気がつくとずっと仕事のことを考えてしまうので・・・・(笑)。
玉城:リフレッシュ方法が見つかって良かったです。
大城:転職から4カ月を振り返って、私自身はあまり結果を残せてないという自己評価だったのですが、玉城さんと今回お話できて、「自分のやってきたことは間違ってなかった」と認識できて良かったです。
玉城:今日は本当にありがとうございました!ますますのご活躍を楽しみにしています。
対談を終えて
転職をお手伝いした当時、「自分の価値を発揮するため、成長するために、私は何をすべきか常に考えている方」という印象でした。久しぶりにお会いしてもやはり変わりなく、とても意識の高い方でした。「自分がすべきこと」を考えぬき、前例がなくとも恐れずに進もうとされる姿勢には、一種の使命感すら感じました。
このような力ある方にお会いすると、私はそのパワーの源泉を知りたくなります。幼少期~学生時代の話を改めて振り返っていただいたことで、大城さんは色々な経験を積み重ねながら、やるせなさや悔しさをも糧にしながら常に成長に向かって行動することが習慣化されていったのだと感じました。
ユニークに感じるのは、生まれ育った地域への想いです。地元の教育に対する熱い想いを秘めていて、住む場所にもこだわっているように感じました。
今回の取材では、地元への気持ちまでは深堀りできなかったので、別の機会でぜひお聞きしたいです。
(玉城良樹)
当社が運営しております、リージョナルキャリア沖縄に【リージョナルHERO】という転職を成功させた方のエピソードを載せた記事を紹介しています。
大城さんの転職成功者インタビュー
「『初めてやりたいことに出合えた』。未経験だったSEの道を切り拓いた探究心と向上心」
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