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2024年もあっという間に中盤に差しかかってきました。これから本格的な夏が始まりますが、皆様はいかがお過ごしでしょうか?

私は過去に中国で5年ほど留学していた経験と、IT関連の仕事で少しだけ中国に関わった経験から、今でも中国事情をたまにウォッチしています。

今回のブログでは、中国のスタートアップについて情報提供していきたいと思います。

 

【目次】

  1. スタートアップとベンチャーの違い
  2. 沖縄のスタートアップの状況(まだまだですが、今頑張っている)
  3. 中国のスタートアップの概要(すごく盛り上がっている)
  4. 沖縄が中国のスタートアップに学べること
  5. 注目すべきスタートアップの紹介
  6. まとめ

スタートアップとベンチャーの違い

まず、「スタートアップ」と似た表現で「ベンチャー」という言葉があります。なんとなく違いを認識している程度だったので、今回改めて定義を調べてみました。

最も大きな違いは、革新性と資金調達や出口戦略にあるようです。

スタートアップは社会に変化をもたらすような革新的なビジネスの展開を目指し、短期的に急速な成長を目指します。前例のない新たなビジネスモデルを作り出すため、スタートの段階では信頼性が低いことから、銀行から資金調達するのは難しく、ベンチャーキャピタルのような未来の成長に期待してくれる投資家から資金を提供してもらいます。急成長した後は、IPOやM&Aなどのバイアウトを出口戦略としている場合が多いようです。

一方で、ベンチャーは既存のビジネスモデルの中で小さい規模でビジネスを始め、創意工夫やフットワークの軽さなどを武器に着実に成長を目指していきます。一般的な小規模企業よりもスピード感はありますが、スタートアップほどではない印象です。成長の先にEXITを目指しているものの、EXITせずにそのまま安定拡大を目指すベンチャーもあるようです。

沖縄のスタートアップの状況

中国の話をする前に、我々の拠点である沖縄の状況を見てみたいと思います。
実は沖縄にもスタートアップが数社あり成長を続けています。代表的な沖縄のスタートアップを見てみましょう。

Alpaca.Lab

沖縄県中城村に本社を置く運転代行配車サービスと運転請負サービスを提供する企業です。

ユーザーがスマートフォンやタブレットから配車依頼を行うことができる運転代行配車アプリ「AIRCLE(エアクル)」は、GPS情報に基づいて、最短時間で最適なドライバーを配車します。

運転請負サービス「AIRCLE ONE(エアクルワン)」は、ドライバーが自転車等でユーザーの元へ向かい、ドライバーの車両を折り畳んでユーザーの車両に積み込み、目的地まで送迎するサービスです。

これまでに、公開されているだけでも累計5億円以上の資金調達に成功しています。

CBcloud

AIとクラウドを活用した物流ソリューションで、物流業界の課題解決を目指すベンチャー企業です。ドライバーファーストを掲げ、物流版ウーバーのような運送マッチングサービスや運送業務効率化支援のシステムを開発しています。

近年、物流業界は深刻な人手不足となっていますが、多重下請け構造になっているため現場で荷物を届けるドライバーは不利な立場に立たされています。CBcloudは、「ドライバーファースト」を掲げ、ドライバーの環境を改善・地位向上を目指して2013年に設立されました。AIとクラウドを活用した物流マッチングサービス「PickGo(ピックゴー)」をはじめ、物流DXシステムの「SmaRyu(スマリュー)」等のプロダクトを展開しています。

現在は5万人以上のドライバーがPickGoのパートナーとなっており、約21万人いる国内の軽貨物ドライバーの4人に1人がPickGoに登録していることになります。

各シリーズで順調に資金調達ができており、累計資金調達額は80億円以上となっています。

EFポリマー

果物由来の生分解性ポリマーで持続可能な農業を革新する沖縄発のベンチャー企業です。果物残さを100%生分解性ポリマーに変換する技術を開発。農業分野を中心に、環境負荷低減と持続可能な社会の実現を目指しています。

従来の石油由来SAP(吸水性ポリマー)とは異なり、オレンジやバナナなどの果皮や果肉を原料にし、環境負荷が低く、土壌中で自然分解される高性能SAPを製造しています。

土壌に混入することで保水性と保肥力を向上させ、水資源節約、肥料使用量削減、農作物収量増加を実現しました。干ばつ対策にも有効です。近年は農業以外にも園芸やペット用品、医療・衛生分野への応用展開にも積極的に取り組んでいます。

機能性と汎用性を向上させた新製品開発や生産能力拡大、グローバル事業展開を目指しています。産学官連携や地域社会との協働を通して、持続可能な社会の実現に向けた取り組みを推進しています。

2021年3月にはシードラウンドで4,000万円2023年4月にはシリーズAラウンドで5億5,000万円の資金調達に成功しています。

スタートアップを支援する動き

OIST Innovation Incubator

OISTイノベーションインキュベーターは、沖縄科学技術大学院大学(OIST)のキャンパス内にあるスタートアップを支援するために設計された施設です。共用ラボスペースやシェアオフィス、共用キッチンなどを備えています。

通常は莫大な初期費用がかかる研究開発型のスタートアップにとって、高性能の機械を共有できるのは大きな魅力の一つです。先述のEFポリマーもこの施設に入っています。

スタートアップエコシステム

沖縄では県としても「スタートアップの創出」を後押しする取り組みを進めています。

「おきなわスタートアップエコシステム・コンソーシアム」が設立され、会長には玉城デニー知事、副会長にはISCO(沖縄ITイノベーション戦略センター)稲垣純一理事長が就任されました。

活動の一環として沖縄県内のスタートアップ企業の一覧を作成しています。

https://ostaeco.notion.site/04790bc91ecf47f1b64a3ff75eb6a46f

また、2023年9月にはスタートアップを支援し、投資家や支援機関との繋がりの機会を創出する場所として那覇市松山に「Startup Lab Lagoon NAHA」が設立されました。

コザスタートアップ商店街

沖縄市コザにある起業家やスタートアップを支援する施設。コワーキングスペース施設等においてイベントや交流会が継続的に行われ、スタートアップコミュニティが形成されつつあります。

カヤックの沖縄スタートアップ図鑑

面白法人カヤックのグループ会社で石垣島を拠点に活動してる「カヤックゼロ」が沖縄のスタートアップ情報を発信しています。また、カヤックゼロは、石垣島でワーケーション施設「チャレンジ石垣島」も運営しており、会社の立ち上げに必要なサポートなども行っています。

カヤックの沖縄スタートアップ図鑑

 

ここまで、沖縄県内でのスタートアップを支援する動きを紹介しました。

一方で、イノベーション人材(アイデアを生み、事業化する人材)の不足や、起業初期またはシリーズA以降の資金調達、各種コミュニティ活動をつなぐHUB機能が弱いことなど、スタートアップの創出や育成にはさまざまな課題が存在します。

 

中国のスタートアップの概要

既に大企業になっていますが、創業当時は中国においてスタートアップであった企業といえば、アリババ、バイドゥ、ティックトック等のIT企業が並びます。

深圳は中国のシリコンバレーと呼ばれ多くのIT系ベンチャーやスタートアップが誕生しました。2010年代から国家政策として万衆創業(マス・イノベーション)を進め、起業を促進する環境が整い、エコシステムが高度化してきました。「孵卵器」と呼ばれ、多くのVCが流入しています。

データおよび分析の大手企業であるGlobalDataによると、中国では2024年の1月〜2月の2ヵ月間で、総額64億ドル(約1兆円)相当のベンチャーキャピタル(VC)資金調達取引があったようです。これは前年比18.9%減であるものの、それでもかなり大きな金額が中国のスタートアップやベンチャーの成長を後押しをしていると言えます。
参照元:https://www.globaldata.com/media/banking/china-startups-raise-6-4-billion-vc-funding-in-first-two-months-of-2024-reveals-globaldata/

 

また、アメリカの調査会社であるスタートアップ・ゲノムと、スタートアップを支援するグローバル・アントレプレナーシップ・ネットワーク(GEN)の世界290以上の都市における350万社のスタートアップの分析に基づく調査レポートによると、2023年のスタートアップエコシステムランキングに中国からは北京と上海の2つの都市がトップ10入りしています。
参照元:https://startupgenome.com/ja-JP/report/gser2023

規模、スピード、激しい競争が中国スタートアップの成長を支えていることが垣間見えます。

 

沖縄が中国のスタートアップに学べること

スピード

中国では事業展開のスピードが非常に速い企業が多いようです。まずは素早く小さくスタートし、状況に合わせてプロダクトやサービスを変化させていくやり方で柔軟にスピーディーに展開している企業が多いと感じます。

中国国内で資金調達ができる背景もあるかと思いますが、展開スピードは沖縄が見習える点であると思います。

資金の集め方

資金面では、各シリーズで100億米ドル以上の資金調達に成功する企業があります。国内だけでなく、国外の投資家からも積極的に資金調達しようとしています。特に先端的な技術を用いる分野においては顕著です。

沖縄においては、行政からの補助金や、特定の分野ではVCの活用もありますが、今後は資金調達のプラットフォームが増え、資金調達の規模や機会が増えると良いかもしれません。

また、それは環境整備というだけでなく、事業者側も県内にとどまらず積極的に資金調達の機会を開拓していく姿勢も非常に大事であると感じます。

注目すべきスタートアップの紹介

AI関連

千诀科技有限公司

脳の視床の働きを模したプロダクト「千訣・丘脳」を開発。マルチモーダルな思考の連鎖を構築することで、さまざまな物体の状態や性質を認識できるようです。

北京生数科技有限公司

清華大学AI研究所の出身者が中心となって2023年3月にスタートしました。自社で開発したマルチモーダル汎用LLMをベースとしてtoBおよびtoCで映像生成系AIのアプリを提供しています。このアプリでは、画像や動画、3Dなど多彩な形式のコンテンツ生成が可能です。OpenAIのsoraのライバルになると言われています。

千诀科技有限公司や北京生数科技有限公司に限らず、多くの分野でAI関連プロダクトのスタートアップが生まれています。特に生成系AIの分野は大手企業の傘下や独立系など多くのスタートアップ・ベンチャーが誕生し競争がとても激しくなっています。

中国では生成AI系プロダクトを一般公開するには国の審査を通過する必要があり、2024年には14種類の生成AI系プロダクトが国の審査を通過しました。「シャオミ」のように既に名前が知られている企業だけなく、ベンチャー系も多く含まれています。今回の審査を除いて、過去に3度審査が行われており、通過したプロダクトの数は過去3回の審査合計で32種類にも上ります。

このことから、生成系AIの競争が激化していることが伺えます。
参照元:https://36kr.jp/273372/

 

IT以外もしくは、IT×他分野のスタートアップ・ベンチャー企業

<フィンテック>

陆金所(Lufax)

ネット上で投融資を中心とした金融プラットフォームを展開している企業です。中国の平安集団が母体となって2011年9月に発足。スタート時は小規模・零細企業に特化して貸し付けを行っていましたが、個人向けの貸付もスタートさせ、母体の平安保険が保有している膨大な個人情報から、迅速な与信が可能となっています。2023年6月末時点で、1970万人に金融サービスを提供。香港とニューヨークで上場しており、2020年当時は、中国のフィンテック企業として、初の米国上場でもありました。

WeBank

2014年に創業したオンラインの少額ファイナンスに特化して金融サービスを展開しているデジタル銀行です。WeChatやQQウォレット上で展開されている同社のアプリを通して、ローンサービスが提供され、与信は5秒未満、資金引き出しは1分未満で行えます。フィンテックのABCD(AI、Blockchain、Cloud computing、Big Data)を活用してサービスを進化させ、急成長を見せています。中国の民間シンクタンクである胡润研究所が毎年発表している世界のユニコーン企業ランキングの2024年版では10位にランクインしました。

<健康医療系>

康方生物科技(CanSino Biologics)

2012年に広東省で設立されたバイオ医薬品ベンチャーで、2020年に香港市場で上場。COVID-19のワクチンで広く知られるようになりました。

百济神州(BeiGene)

2010年に設立され、癌や免疫分野を中心に研究開発を進める企業です。現在では1万人以上の従業員のうち、三千人以上が研究開発に従事しています。ナスダック、香港、上海科創板で上場しており、3つの取引所で上場をした最初の医薬品企業です。

<教育関連>

VIPKID

子供向けオンライン英会話レッスンサービスを展開しています。2013年に設立され、2016年にシリーズCで1億米ドル、2018年にシリーズD+で5億米ドルの資金調達に成功しました。質の高い教育が特徴で、学部卒以上かつ平均7.5年以上のレッスン経験のある英語教師が採用されています。教師採用の選考が厳しく、5回の面接を実施し、合格率は5%程度と非常に低いようです。レッスン形式は個別カリキュラムによるオンラインのマンツーマンレッスンを行っています。

作业帮(Zuoyebang)

オンライン学習のプラットフォーム。問題集や動画コンテンツ、テキストによる学習コース等多様な学習モデルを提供しています。また、UXの向上のためにAIやビッグデータの活用を積極的に行っていることも特徴です。ユーザー同士で質問、ディスカッション、ノートの共有などが可能となっています。シリーズCで約1.5億米ドル、シリーズDで約3.5億米ドル、2020年にはシリーズEで約7.5億ドルを調達しました。

<消費財系>

完美日记(Perfect Diary)

2017年設立のコスメティックブランドです。18歳〜28歳の年齢層をターゲットとし、化粧品やスキンケア用品を展開しています。品質の面でコストパフォーマンスに優れていることと、巧みなマーケティング戦略で急成長している企業です。シリーズBで約10億米ドル、シリーズCで約20億米ドルの資金調達に成功しました。

瑞幸咖啡(Luckin coffee)

2017年に創業した中国で最も勢いのあるコーヒーチェーンです。2020年に粉飾決算の事件があったものの、今や店舗数が1万6000店舗を超えました。2023年には約34.5億米ドルの売上で、中国国内においてスターバックスを追い抜き中国トップのコーヒーチェーン店となりました。現在では当たり前になっていますが、モバイルオーダーで事前注文をして店舗で受け取るという利用のしやすさが特徴で、2017年当時の中国では新しい購入スタイルでした。

その他の話題

5,500万ドル調達した中国人女性

中国国内ではありませんが、中国出身で米スタンフォードで博士課程に在籍していた女性が映像系生成AIである「Pika」を開発しました。たった二人でスタートしたプロジェクトでしたが、5,500万米ドルを調達し注目されています。

 

まとめ

レキサン リージョナルキャリア沖縄 玉城

いかがでしたでしょうか。

沖縄と中国ともに魅力あるスタートアップがあります。中国のスタートアップは大規模かつ急速な成長を目指していて、沖縄のスタートアップは地域特性を活かしながら持続可能な成長を目指しているように見られます。

中国のような巨大マーケットと沖縄のような島国を一概に比較することはできませんが、沖縄は国内市場だけでなくアジア全体をターゲットにすることで、さらなる成長・拡大が見込めそうです。

中国の話をしたい方、沖縄のスタートアップ・IT企業への転職に興味のある方は、ぜひ私にご相談ください。中長期での移住・転職のご相談も承っております。

玉城 良樹 Tamashiro Yoshiki
コンサルタント
沖縄県糸満市生まれ。県内大学卒業後、中国へ(北京外語大学→西安交通大学)帰国後は東京で就職。IT企業にて営業職として従事。沖縄へUターン後、ベンチャー企業を経て、株式会社レキサンへ入社。現在はIT企業専門担当として活躍中。インドア派だが、たまに自然豊かな場所へ行きエネルギーチャージしている。

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