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(株式会社コーカスが展開する物販事業「SuiSavon-首里石鹸」の統括マネージャーを務める松尾大樹さん。同社屋上にて=2023 年 11 月、那覇市首里)

デニムのジャケットがよく似合う、鍛え抜かれた細身のスタイルと軽やかな立ち姿。
那覇市首里の高台に佇む株式会社コーカス(緒方教介社長)に到着すると、松尾大樹さんが颯爽と出迎えてくれました。

52 歳で同社に転職して3年、現在は同社が展開する物販事業「SuiSavon-首里石鹸」の統括マネージャーとして、店舗のマネジメントや採用活動などを担当しています。
「小売業・接客業は、とてもクリエイティブな仕事。その価値をもっと高めたいんです」
仕事へのやりがいや喜びを生き生きと語る松尾さんですが、転職に際しては「50 歳の壁」にもがき苦しんだ時期もありました。

そんな松尾さんが転職を成功させ、組織の中核で活躍し続けられるのはなぜかー。
転職をサポートした株式会社レキサンの長濱雅徳コンサルタントが松尾さんと語り合う中で、ミドル層におけるキャリアチェンジに重要な「鍵」が見えてきました。(2023 年 11 月取材)

精神と肉体を常にメンテナンスしておく

(左から、株式会社コーカスの松尾大樹さん、転職をサポートした株式会社レキサンの長濱雅徳コンサルタント)

 

長濱:お久しぶりです。尊敬する「イケオジ・松尾さん」にお会いできて幸せです。そして、相変わらず鍛え抜かれたお体です!

松尾:毎朝 30 分のトレーニングを続けています。空手に加えてテニスも始めました! でも私よりも、空手の先生方が本当に凄いのです。70 代 80 代の方にスピードも技術も勝てないわけですから。継続の力を痛感します。心と体はコインの裏表だと思うので、仕事のパフォーマンスを高めるには、精神と肉体の両方を常にメンテナンスして整えておくことが大切だと思っています。

長濱:素晴らしいです!その「継続」が一番難しいのですが(笑)…頑張ります! さっそくですが転職されて早3年、松尾さんのご活躍を心から嬉しく感じております。

松尾:ありがとうございます。現在はコーカスが展開する物販事業「SuiSavon-首里石鹸」の統括マネージャーとして、5店舗のマネジメントや採用活動などを担当しています。転職から3年、何より嬉しいのは「ブランドの成長」と「スタッフの成長」を実感していることです。

長濱:松尾さんは転職されるまでの 28 年間、誰もが憧れるラグジュアリーなファッションブランド2社でキャリアを積み重ねてこられました。そんな過去のキャリアや転職時のお話は、「転職成功者インタビュー:52 歳で出合った新ステージ。過去の成功体験を捨て、小売業の魅力追求を沖縄で目指す。」で紹介させてもらいましたが、もっとお聞きしたい話があります。さらに深掘りさせてください!

リージョナルHERO 転職、転職エージェント

「沖縄のために」との思いで転職を決意

長濱:前述のインタビューと少し重複しますが、コーカスさんへの転職のきっかけを改めて教えてください。

松尾:沖縄で勤務できる年限が終わりに近づいていたことが最大の理由です。沖縄を離れて定年まで全国各地の店舗を回るのか、退職して沖縄に残るのか、選択を迫られる時期でした。

長濱:人生の岐路に立たされたわけですね。

松尾:色々と考えた結果、私はやはり沖縄で働き、家族との時間を大切にしたいと考えました。加えて、60 歳以降の人生を見越した働き方を考え、「地域のため、沖縄のために働きたい」と強く思ったわけです。当時 52 歳だったので、あと何回チャレンジできる機会があるだろうかとも考え、「今が決断する時だ」と思い、2度目となる転職を決意しました。

長濱:転職市場では一般的に「年齢を重ねるほど厳しくなる」と言われます。松尾さんはいかがでしたか?

松尾:実は…当初は全く上手くいかなかったんですよ。3〜4社の転職支援会社に登録したものの、登録から数カ月、ピタッとくる提案やアプローチがないまま退職日を迎えることになりました。

長濱:どんなお気持ちでしたか?

松尾:コロナ禍で新卒採用さえストップしていた企業も多く、転職のタイミングとしては良くなかったわけですが、
「このままではまずい!『50 歳の壁』とはこういうことか」。率直にそう痛感しました。

長濱:相当なキャリアを積まれた松尾さんでも厳しい状況だったのですね。そんな中でリージョナルキャリア沖縄(運営:株式会社レキサン)にご登録いただきました。実はお会いしてすぐ「松尾さんはコーカスさんとマッチするのでは」と思い、ご提案した記憶があります。当初は確か「未経験の業界や職種を含めゼロベースで考えたい」とのことで保留されたのですよね。

松尾:そうでした(笑)。当時は経験のある小売業以外も視野に入れゼロベースで考えたいとの思いがありました。ただ、考えるほどに「沖縄で小売業の価値を高めたい」との思うように。そんなある日、まだ暗い朝方に散歩しているとコーカスの社内だけが明るくて、「何か楽しそうなことが起きていそうだ」と感じたんですよ。それですぐ長濱さんに「コーカスさんに会わせてください」とお願いしたんですよね。

理念や価値観、社風や雰囲気も大切

長濱:コーカスさんへの転職を決断された理由を教えてください。

松尾:「沖縄のためになる。をする。」といった組織の理念や、社長である緒方教介の「イズム(流儀)」と自分の考え方が合致したことが大きな決め手でした。良い行動や仕事を互いに褒め合う社風や、人材育成に対する考え方にも共感しました。
社風や職場のテンションが合うことは、とても大切だと思います。理念が机上の空論で
はなく、組織に浸透しているかどうかは、社風や雰囲気に現れると思うからです。

長濱:理念や価値観だけでなく、社風や雰囲気もマッチしたわけですね。

松尾:何より社長の緒方との面接がとにかく楽しかったんです。「求められていること」と「自分が役に立てること」が一致していると感じました。それまでの「ブランドを守る」という立場から、「ブランドを育てたい」という思いが強くなりました。

長濱:「沖縄のために」と思われるようになったのはなぜでしょうか?

松尾:うーん、正直なぜか分からないのですが…。沖縄で一緒に働くスタッフを見ていて「内地(沖縄県外)に対する引け目があるのかな」と感じることが多々ありました。でも私は、「トータルバランスで考えると沖縄が勝っている」と感じていました。

長濱:具体的にはどういうことでしょうか?

松尾:例えば、販売スキルを公式的に考え、「おもてなし×知識・技術×人間力」だと仮定します。沖縄のスタッフの中には、「知識や技術は少し足りないけど、おもてなしや人間力では優っているな」と感じることも多く、「トータルでは沖縄が勝てる可能性が高い。勝たせたい!」と考えたわけです。

長濱:そんな思いが「沖縄のため」へと繋がっていったんですね。

 

自身のアップデートとアンラーニング

コーカスの社内イベント。プロに指導を受けた本気のダンスを披露する松尾さん。
(前列2人目)=2023 年 12 月

 

長濱:転職して3年が経ちました。

松尾:厳しいコロナ禍を経て、組織は急成長しています。入社当初と今では「首里石鹸」の認知度も格段に上がりました。2023 年 11 月にフォーブス・ジャパンによる「第 7 回 Forbes JAPAN SMALL GIANTSAWARD」のファイナリストに当社が選出され、社長の緒方がベストタレントイノベーション賞を受賞したことも大きな喜びです。

長濱:ベンチャーからスタートした御社ですが、今やベンチャーのレベルを越えました。

松尾:スピード感はベンチャーのままなので、組織の拡大に合わせオペレーションも早期に進化させる必要があります。私自身のアップデートも必要です。今は体力も気力も十二分ですが、年齢的にこれから少しずつテンポが遅れる可能性があるので、新しいことを吸収するスピードを維持していきたいですね。

長濱:ご自身のアップデートとは?

松尾:過去の経験は「武器」でもあるんですが、同時に経験が邪魔する怖さもあります。過去の成功体験はかつての経験であって、「今」「この時代」「この企業」に必要とされる経験ではありません。その意味で、組織の「イズム」に合わせた変化が何より大切だと考えます。

長濱:昨今よく言われるアンラーニングですね。

松尾:過去に固執しないで常に変化することが大切だと思っています。全てを捨て去る必要はありませんが、過去のフレームや考え方は一旦横に置いておく必要があると考えます。その意味で、転職後には「今の企業の体質や風土にどっぷり浸かる」ことが重要だと感じています。

長濱:なるほどです!それを実感されるエピソードがあったのですか?

松尾:印象に残っている事例を一つ。返品対応のマニュアルを作る際、私は前職までの経験を踏まえ、幾つかのケースを想定して返品対応の可否を判断する案を作成していたんです。それを緒方社長に見せると「全て返品・返金だよ」と即答されたんです。驚きました。

長濱:全て受け入れるとは驚きですね。

松尾:それが緒方の「イズム」だったんです。当時の私はキャッチしきれておらず、過去のやり方に固執していたわけです。そんな経験を経て、組織の理念や価値観や風土にフィットさせていくには、「まずはどっぷり浸かった方がいい」と思うようになりました。

過去の経験は横に置き、「どっぷり浸かる」

長濱:とはいえ年齢や経験を重ねると「どっぷり浸かる」って難しいことだと思います。どんな心掛けで、どんな努力をされているんですか?

松尾:まさに、過去の経験を拭い去ることはとても難しいことです。ともすれば過去の成功体験や経験がすぐに鎌首をもたげてくるので、常にそれらを捨ててゼロベースに戻す努力を続けようと思っています。きっと多くの転職者が抱える葛藤じゃないでしょうか。だからこそ、「自分の経験は横に置いておく」「どっぷり浸かってみる」ことを肝に銘じています。

長濱:逆説的な質問になりますが、これまでの経験が生かされていると感じることはありますか?

松尾:「常にお客様の視点で」という小売業・接客業としての矜持は変わりません。主役はお客さまです。これは1社目の話ですが、その会社の親会社では「売り場」ではなく「お買い場」と表現していました。「お客さまが主体的に買う場所」「私たちは主役のお客さまを引き立てるキャスト」という思いが込められた表現です。

長濱:とても哲学的な表現ですね。

松尾:小売業というのは、その言葉通り、小さな一つ一つのモノを丁寧に売っていくビジネスです。数百円の商品にも、開発までには幾つものストーリーがあります。そんな思いも併せて販売できるチームでありたいと考えています。

働くことで得られる「意味的報酬」を大切に

2023 年末の社内イベント。「イベントでは社員みんな本気で楽しみます」と松尾さん=2023 年 12月

 

長濱:松尾さんが働く上で大切にされていることを教えてください。

松尾:仕事を通して得られる「報酬」は大きく分けて二種類あると思います。「経済的報酬」と、働くことで得られる成長実感や誰かの役に立っているという貢献実感などの「意味的報酬」です。私自身は「意味的報酬」を大切にしています。

長濱:後進の育成にも力を注がれています。

松尾:自分の成長はもちろん大切ですが、スタッフの成長が私の生きがいなので、自分より優秀な人材を育てるのが目標です。といっても、手取り足取り指導するといった「育て上げる」スタイルとは異なります。緒方の「イズム」を浸透させ、スタッフが成長できる環境をつくるのが私の役目です。大切なことは何度も言葉にして伝えることを意識しています。

長濱:きっと言葉にできないようなご苦労もされたと思います。

松尾:「試されているな」と感じる出来事は何度もありました(笑)。でも私は、困難な出来事が起きると「信頼関してもらうチャンスだ!」と思い、真正面から取り組むタイプなんです。きつさから逃げたくないんです。

長濱:素晴らしいです!そうやってスタッフとの信頼関係を築かれていかれたのですね。昔からそういうお考えだったのですか?

 

(写真)沖縄に来る前から続けているという空手。今なお日々の鍛錬に余念がありません=2023 年 12 月

松尾:東京で最初に入門した空手道場がすごくきつい練習だったんですが、師匠から「キツイ顔をしない」と厳しく言われていたんです。確かに、きつい顔をするときつさが倍増するんですよ。「苦しい時が、伸びている時だよ」という言葉も胸に刻まれています。もちろん行き過ぎた厳しさはアウトですが、「少しの背伸び」を繰り返すうちに、少しずつ自分の“容量”が大きくなっていくと感じますね。

長濱:松尾さんのお話を伺い、「行動が変われば習慣が変わる、習慣が変われば人格が変わる、人格が変われば運命が変わる」という言葉を思い出しました。仕事にもプライベートにも通じる大切なメッセージを、本日はたくさん聞かせていただきました。

松尾:私こそ3年間を振り返る大切な時間となりました。

長濱:今後のご活躍も楽しみです。またぜひお話を聞かせてください!

(写真&文 佐藤ひろこ ※一部は提供写真)

対談を終えて

久しぶりに松尾さんのお話を伺い、非常に刺激を受けました。
お会いした当初からそうなのですが、常に謙虚で、誠実で、チャレンジングで、健康的で、格好良くて、お洒落で…まさに男が憧れる「漢」です!
松尾さんはきっと「褒めすぎだよ」と謙遜されると思いますが、本当にそう感じます!

松尾さんのブレない軸、お人柄、価値観が一体どこからきているのか、その源泉を知りたいと思い、インタビューをお願いしました。今回は改めてさまざまなエピソードをお聞かせいただき、その源泉の一端を垣間見せていただいたことに感謝申し上げます。

幾多のエピソードの中で、私が特に印象に残っているのは【空手】のお話です。松尾さんは空手を通じて身体だけでなく「精神(心)」も鍛えておられ、仕事に通ずるヒントも沢山得られているとのことでした。
お仕事に邁進されつつ、空手やテニスに取り組む時間、ご家族と過ごす時間、地域活動など、プライベートの時間も生き生きと過ごされていらっしゃる松尾さん。まさに最近注目されている「ワーク・ライフ・ミックス」を実現されていると感じました。

私自身も松尾さんを見習い、仕事とプライベートの適度なバランスを考えるのではなく、どちらも最高な状態を成し得るべく頑張っていきたいと思います。(長濱雅徳)

 

当社が運営しております、リージョナルキャリア沖縄に【リージョナルHERO】という転職を成功させた方のエピソードを載せた記事を紹介しています。

■松尾大樹さんの転職成功者インタビュー
52歳で出合った新ステージ。過去の成功体験を捨て、沖縄で小売業の魅力を追求はこちらより↓
よろしければご一読ください。

リージョナルHERO 転職、転職エージェント

この記事を読んでいただいた皆さまの中にも、「沖縄を良くしたい」「大好きな沖縄で思いっきり働きたい」という方、いらっしゃると思います。是非是非お話を聞かせてくださいませ!

長濱 雅徳 Nagahama Masanori
コンサルタント
沖縄県那覇市生まれ。神奈川大学卒業後、教育関連の仕事に従事。東日本大震災をきっかけにNPO法人カタリバへ入社。岩手県をはじめ、東京や島根で経験を重ねる。結婚・出産を機に沖縄にUターンし株式会社レキサンに入社。3児の父であり、趣味は料理。レシピ動画を参考に作った料理は家族からも高評価である。

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