OISTのスタートアップベンチャー「EF Polymer」へ転職した八木沢さんと対談
「僕たちには確かな技術力があります。それを沖縄から全国・世界の市場に広めていきたいですね。」
エンジニアの八木沢勇介さんは現在、沖縄発のアグリテックベンチャー「EF Polymer株式会社」の研究開発マネジャーとして、100%土に還る超吸水性の「EF ポリマー」の開発事業を牽引しています。
生まれ育った千葉から沖縄へ移住し、世界規模の水不足や農業・環境問題の課題解決を目指すスタートアップ起業にIターン転職を果たした八木沢さん。
彼の転職をサポートした株式会社レキサン社長の島村賢太が、久しぶりに八木沢さんの勤務先を訪れ、「沖縄のスタートアップの可能性」や近況について語り合いました。
沖縄科学技術大学院大学(OIST)のインキュベート施設内にあるEF Polymer株式会社は、アグリテックベンチャーとして、国内外から注目を集めています。
同社で研究開発マネージャーを務める八木沢さんの転職成功者インタビュー「沖縄発アグリテックベンチャーで研究開発を統括、闘病10年を経て出合った新たな道」はこちら↓
沖縄で働き芽生えた「恩返し」の気持ち
島村:お久しぶりです。少しお痩せになりました?
八木沢:少し前にインド出張があり…。スパイス料理が続いて胃腸をやられた上に、結膜炎にもなっちゃいました(笑)。だからですかね。でも、僕は長年療養していたこともあり、投資家の皆さんを弊社の製造工場に案内しながら工程や品質管理を確認するという、海外出張のミッションを無事こなせたことが何よりの喜びです。
島村:八木沢さんがすっかり沖縄に馴染まれて、仕事でもバリューを発揮されていることが私としても何より嬉しいです。仕事面はもちろん、以前より健康になられたご様子で、人生が好転しているように感じます。「沖縄に貢献したい気持ちが芽生えてきた」とお話しくださったことも嬉しかったです。そう思われたのは何故ですか?
八木沢:それはやっぱり体調が安定して、気持ちよく働ける今があるからですね。沖縄の自然環境や周囲の皆さんのおかげです。「沖縄に生かされている」と感じています。なので、今後はその沖縄に恩返ししていくのが僕の務めだと思っています。
島村:ありがとうございます。沖縄県民としては、何よりそのお気持ちが嬉しいです。でも、あまり背負いすぎないでくださいね〜(笑)。
八木沢:意気込み、ということで(笑)。
沖縄から世界へ 「希望の星」となるベンチャー
島村:沖縄の製造業に携わる方々には失礼な言い方になりますが、「沖縄は製造業不毛の地」と言われてきました。その中で御社は「希望の星」です。既に世界が舞台となっていますから。EF Polymerの成功がOISTの成功につながり、沖縄のスタートアップ界隈を盛り上げることにもなると思っています。
八木沢:沖縄のことは移住前、僕なりに調べました。そこで感じた沖縄の課題は、政治的に緊張を強いられていること、所得格差、産業構造の偏り、などが挙げられると思います。リゾート開発など観光業は沖縄のリーディング産業ですが、それ以外の主となる産業構造は一朝一夕に変革できるものではありませんが、沖縄にインテリジェンスを結集させて、良い循環サイクルを創れるといいですね。沖縄には、その素地がありますし、今後の進む方向性によっては、「日本の道しるべ」になれるとさえ感じます。
島村:「日本の道しるべ」とは具体的にどういうことでしょうか。
八木沢:例えば、OIST発のベンチャー企業がどんどん出て来て、世界の市場で存在感を示すことです。我々もそれを目指して取り組んでいます。
島村:なるほど。世界で勝負できるスタートアップ企業は、全国的に見てもまだまだ少ないですからね。多くの県民はまだ気づいていないと思いますが、OISTのスタートアップが成功することは、沖縄にとって非常に大きな「希望の星」になると確信します。
八木沢:創業者のナラヤン・ラル・ガルジャールCEOがインド人ですからね。元々、視点がグローバルです。「日本国内のみが対象」と思っている社員はいないですね。
島村:他のスタートアップにはない大きな魅力です。初めからクロスボーダーを前提に「日本から世界へ」「沖縄から世界へ」という眼差しが素晴らしいです。
八木沢:社長がインド出身だという理由だけではありません。政治的な賛否はさておき沖縄には米軍基地があり、街中を歩いていても外国出身の方が多いので、目線が日本だけに留まらないわけです。ビジネスや研究開発という観点でも、自然と目線が外に向いていると感じます。
「沖縄」の地理的環境がプラスになるわけ
島村:スタートアップ企業が沖縄で展開することのネガティブポイントはありますか?
八木沢:特段ないです。例えば、東京でも沖縄でも本質的には変わらないと思います。ただ、僕自身が沖縄に来る決断がすんなりできたのは、独身だったから。もし結婚して子どもがいたら違っていたかも。住環境が変わる問題で躊躇する人が多いかもしれません。
島村:引っ越しを伴いますからね。例えば、情報や人脈の面での格差はいかがですか?
八木沢:一昔前とは状況が変わっています。最近はオンライン会議が当たり前ですし、物理的な距離の遠さは、ハンデにはなりません。逆に沖縄という地理的環境がプラスに働いていると思います。
島村:沖縄の地理的環境がプラスに?
八木沢:例えば、年度末の時期には官公庁の人がよく沖縄に来てくれます。霞ヶ関じゃなく沖縄で会うと、お互い割とフランクに話ができるわけです。スーツやネクタイなしで格式ばらずに会えるからですかね(笑)。それは意外と強みだと思います。
島村:なるほど。東京だと確かにがっちり武装して会わないといけない雰囲気ですからね。
八木沢:土地の狭さだって、逆に有利になると感じます。
島村:どういうことですか?
八木沢:例えば、沖縄本島北部と言われる恩納村からも、那覇空港まで車で約1時間です。他の地方都市だと、空港までの移動に長時間かかる地域が多いです。それに対して沖縄はLCCも数多く就航していますし、県外と行き来しやすいという環境も有利ですよね。
エンジニアとベンチャーをOISTが協力サポート
島村:OISTで研究開発を進めることのメリットはありますか?
八木沢:何より実験施設や設備環境が充実していることです。OISTは内閣府直轄です。OISTと内閣府がタッグを組んで沖縄発のベンチャーを後押ししてくれる環境は、とても強いポイントですね。OISTのラボに必要な研究設備を整えてくれる中で、OISTのベンチャーも申請すれば借りることができます。
島村:それは大きいですね。自社で設備を整えて減価償却を考えながらやるのは、とても大変なことですよね。
八木沢:本当にそうです。必要な研究装置には1000万円レベルも普通なので。とてもじゃないけどベンチャーでは買えないです。化学工業分野で事業を起こしづらい理由の一つです。
島村:OISTのベンチャー支援の認知度を高めて、「研究開発型のスタートアップなら沖縄に行こう!」みたいな流れをつくりたいです。
八木沢:OISTがベンチャー育成に積極的に取り組んでいる、という事実は周知したいですね。後は、実験施設で出会う研究者やエンジニアと情報交換や交流を深められるのもポイントが高いです。沖縄で研究開発に成功すれば、製造業の育成にも貢献できます。エンジニアにとってはやりがいを感じられるチャンス。自然との距離も近いので、伸び伸びした雰囲気の中で働けるのもメリットですね。
島村:僕としては八木沢さんのような優秀なエンジニアが、沖縄へどんどん来ていただけるようお手伝いをしたいです。沖縄から新しい産業をつくっていく勢力、ベンチャーエコシステムの流れができると面白いですね。EFポリマーさんは、その最先端にいるので期待しています! あっ、またプレッシャーをかけてしまいましたね(笑)。
八木沢:最近は僕も少しスマートな考えになったので大丈夫です(笑)。以前なら「期待します」って言われると、すごく燃え上がっていたのですが、沖縄に来てからは燃え上がりつつも、肩の力を抜くことを覚えました(笑)
島村:一緒に盛り上げていきましょうね! 私たちレキサンはOISTインキュベーション施設にも拠点を構えているので、これからも足繁く通って御社の取り組みを応援します!
対談を終えて
先日、ご入社されて5カ月目になる八木沢さんと対談させて頂きました。
彼の勤務先のOISTインキュベーション施設iSquareを訪問し、そこでの話がとても印象的で、私たちが目指す「沖縄から世界へ」という夢をさらに明確にすることができました。
八木沢さんは、沖縄で働くことで「恩返し」の気持ちが芽生えたとおっしゃいました。彼の言葉には、沖縄という地で働くこと、沖縄から世界を相手に挑戦をすることの意味が感じられとても刺激を受けました!私たちも同じように、沖縄に貢献することを目指して、彼らスタートアップと一緒に挑戦したいと思います。私たちが目指すのは、沖縄の発展のために、新しいビジネスの形を作り上げることです。
また、八木沢さんが語った「沖縄のスタートアップの可能性」にも、大きな期待を抱きました。彼の会社は、グローバルに活躍するスタートアップ企業の一つです。
沖縄には、素晴らしい環境があり、世界に向けたビジネスを展開することができると私たちは信じています。
私たちレキサンも、OISTインキュベーション施設に拠点を構え、沖縄のベンチャーエコシステムを応援しています。私たちは、このエコシステムを通じて、沖縄の未来を共に築いていくことを目指しています。
今後は、八木沢さんと一緒に、沖縄から世界に挑戦することの魅力を発信し、多くの人たちが沖縄に興味を持ってくれるような活動を展開していきたいと思います。