沖縄にいつ戻る?転職する?〜沖縄UIターン・転職時期・地域のススメ〜
「いつかは沖縄に戻りたい」「沖縄で働いてみたい」「でもいつがいいんだろう?」
そんな気持ちはあるけれど、自分のこれまでのキャリアを転換して、務めてきた職場や地域を離れることへの不安を抱く人も多いのではないでしょうか。 今回は、沖縄に戻って転職を考えている方(Uターン)・沖縄に移住したい方(Iターン)向けに、沖縄のUIターン状況や職業別の年代傾向、沖縄県の地域別UIターン傾向、産業・職種別の転職市場の傾向について解説します。
「沖縄に戻りたい」その想いの背景と年代別の課題
「沖縄に戻りたい」と思いながらも、仕事や生活のことを考えるとタイミングに迷う方は少なくないでしょう。その時々のご自身の年齢や立場によっても、抱える事情や不安は様々です。
弊社レキサンでも、沖縄転職に関する様々な悩みをお聞きします。特に、それぞれの年代ごとの状況や課題感の特徴が伺えます。年代別の傾向としては、以下のとおりです。
年代ごとの状況や課題感の特徴
- 20代~30代前半
(特に地方のご出身で首都圏にお住いの方々)都会でずっと住むイメージが持てないので地方にUIターンしたい。
- 20代後半~30代中盤
結婚・育児などライフステージの変化で、家族のためにUIターンしたい。
- 30代中盤~40代
子どもが小学校に上がる前に生活の基盤を地元に移したい・実家付近で育てたい。親の介護をする必要があるので戻りたい。
また、実際ご相談いただくお悩みとして、例えば次のようなものがあります。
年代ごとの状況や課題感の実際の声
- 30代 女性 愛知県在住 製薬メーカー営業
製薬系の営業経験を活かせるところがなく、キャリアチェンジしても給与が大きく下がってしまいます。給与を妥協してキャリアチェンジするにしても、どんな業界や職種が良いのかわかりません。
- 30代 男性 東京都在住 証券営業
沖縄に貢献したい気持ちがあり、また子どもが1人いるので沖縄で子育てをするために帰りたいのですが、これまでの金融・証券系の経験を活かせる転職先が見つかりません。沖縄に戻ると年収が大幅に下がってしまう点も悩ましいです。
- 30代 女性 東京都在住 広告代理店 企画営業
沖縄に帰りたい気持ちはあるけれど、キャリア(現職・管理職)が途切れてしまうリスクから今はまだ東京に残った方がいいと思っています。東京でも女性のキャリアを作るのは大変ですし、沖縄だと更に給与面・キャリア面で共にハードルが高いです。
お話をお聞きすると、満員電車に揺られながら今のご自身の状況やこれからのことを考える方も多いようです。 結婚・出産や子どもの進学時期にUIターンを検討されるタイミングが全体的には多い傾向にあり、逆に、家をご購入されたり、子どもが小学生以上の年代になってくると転職活動をされる方はグッと減っていきます。
また中には、実際に沖縄へUターン転職をしたものの、業界も職種も以前のキャリアとは異なる職業に転職され、それまでの自分のスキルを十分に活かせていない実感から更なる転職を検討中という方もいらっしゃいます。
いずれもこれまでのキャリアから新たな職場、職業に転職する際の葛藤が多くの方の不安の根底に感じられます。また、沖縄転職で避けては通れない年収の変化への不安も多い印象です。沖縄の年収に関しては、過去記事「転機に立つビジネスパーソンのための沖縄移住・転職ガイド。年収500万円以上を確保する沖縄での転職について」や「沖縄県の平均年収はおよそ330万円、500万円以上の人の特徴や低い理由まで」でも取り上げておりますので、こちらもぜひ合わせてご覧ください。
このように転職に際しては多くの不安や課題がある中で、実際に沖縄へ移住・転職をされる方はどれほどいるのでしょうか?
沖縄県や全国のデータから、その状況について見ていきましょう。
沖縄のUIターン転職の傾向
厚生労働省の「人口移動調査」によると、各都道府県出生者全体に占める Uターン者の割合は、西日本地域に多く、特に九州地方で目立ちます。上から順に1.宮崎県 2.沖縄県 3.鹿児島県 となっており、沖縄県出身者に至っては県外移動経験者の70.9%が Uターン者となっていることがわかっています。
沖縄のUターン比率なぜ高い?
全国的に見ても2番目にUターン者が多い沖縄ですが、なぜそのような傾向があるのでしょうか?
ブランド総合研究所「関係人口の意識調査」によれば、全国の調査モニター(約450万人)から得た有効回答数20,856人のうち、各都道府県別でのUターン意欲を比較したところ、沖縄が最も高い結果となりました。同県出身者の14.0%が「すぐに戻りたい」、32.6%が「いつかは戻りたい」など、全体の半数近くが「戻りたい」と答えたのです。(※Uターン意欲…「すぐに戻りたい」を100点、「いつかは戻りたい」を50点、「戻ってもよい」を25点として加重平均したもの)
この結果を踏まえると、沖縄出身者は沖縄へ戻りたい意欲を持っている人が多いというのがUターン者の数にも表れている可能性がありそうです。
沖縄県の転入者数の増減
また、自治体への転入者数は住民票の移動によってカウントされるため、Iターン者の数については個別の数値データがないものの、沖縄県はここ数年間で転入者が増加しています。2023年には28,847人が転入しており、前年から1,232人増加しています。これは全国トップクラスの増加率です。
人口増減率でも沖縄県は全国で2位を誇っており、東京に次ぐ順位となっています。この背景には、沖縄県が持つ豊かな自然環境や文化的魅力も移住の決め手に繋がっていることも考えられますが、先に見たUターン者の動向が転入者数へ影響しているという面もありそうです。
では、移住者の年代に傾向はあるのでしょうか?沖縄県の公式データを元にその傾向をご紹介します。
転入者の多い年齢層
「住民基本台帳人口移動報告」 の沖縄県データをみると、転入者が多い年齢層は20~30代です。内訳としては、最も多いのが20~24歳、ついで25~29歳、30~34歳の順となっています。
その理由としては、
1.20~24歳…進学(大学・専門学校)や新卒就職での移動が集中しやすい年代
2.25~29歳・30~34歳…就職や転職、結婚などライフステージの変化が多い時期のため
ということが考えられます。はじめの章で弊社レキサンが体感としてご紹介した転職に関する年代別の悩みや課題感と比較した際に、やはり20~30代は転入・転出ともに移動が活発で、沖縄県全体でも同様の傾向が見られるようです。
一方で、自治体によっては若干年齢層の傾向の違いが見られます。例えば、石垣市では社会動態として転入超過と転出超過を繰り返しており、これは全国的な景気動向や移住ブームの影響が考えられます。特に、進学や就職に伴う若年層の転出超過を、UターンやIターンによる転入で補う構図となっています。Uターン・Iターンの中心は20代後半から30代前半であることもわかっており、沖縄県全体の傾向と比べると、20代前半が最も転入者が多いという県のデータとは少し異なりますね。
このように、地域ごとにUIターンの特色が多少異なるため「沖縄のUIターンの傾向」と一括りにはできない面もあります。とはいえ、おおむねの動向は同じと言えそうです。
[参照:国立社会保障・人口問題研究所『第8回人口移動調査』2016年]、ブランド総合研究所「地域ブランドNEWS」2023年、資産活用総研2024年、沖縄県企業立地ポータルサイトe-stat、「住民基本台帳人口移動報告 年報(実数)」2024年、石垣市「石垣市人口ビジョン」2016年]
では、次に職業別での就業者の割合の違いや、それにより考えられる転職しやすい年代などはあるのか見ていきたいと思います。
全国と沖縄の職業別就業者の割合~転職しやすい年代とは?~
転職をするにあたって、業界や業種ごとに転職しやすい時期、または需要の多い年代層などはあるのでしょうか?沖縄県の労働市場の傾向を考えるにあたり、まずはデータで把握できる範囲で全国の産業別就業の年代構成をご紹介します。
〈全国の産業別・年代構成〉
製造業…30~39歳層が主体で、総務省の2023年労働力調査では55歳以上の比率は35.5%に上昇している
サービス業…比較的若年層(20~29歳)の割合が高い一方で、介護や福祉分野など一部は60歳以上の就業者が増加傾向
建設業…全体の就業者数は減少傾向で、55歳以上の就業者比率は年々上昇。平均年齢は約47.9歳(令和3年時点)若年層(29歳以下)の割合は約11~12%と低い現状
農業…基幹的農業従事者の平均年齢は約68.4歳と非常に高い水準にあり、65歳以上が全体の70%近くを占めている
医療・福祉…介護職員や看護師の平均年齢は40~50代が中心で、特に介護職に関しては高齢化が進行しており、60歳以上の就業者が増加傾向
IT業界…従業員の平均年齢は40代前半で、男性が多くを占める一方で企業によっては新卒採用比率が高い傾向がある
次に、沖縄県の「労働力調査(令和5年)」によると沖縄県の就業者数は77万4千人で、産業別の従事者数は図のとおりです。
産業割合では、圧倒的に第三次産業が労働従事者数を占めています。中でも「サービス従事者」が最も多く19.1%、次に「専門的・技術的職業」従事者が18.3%、続いて「事務従事者」が17.3%となっており、観光産業が中心の沖縄特有の労働市場状況といえます。逆に労働従事者数の少ない職業では、「保安従事者」が1.7%、「農林漁業従事者」が3.5%、「管理的職業」が5.6%となっており、前述の全国で見た農業従事者の平均年齢の高さ等の現状と沖縄の労働市場もリンクしている現状が伺えます。 また、以下の図は令和5年の沖縄県の年齢層別の就業者数を表しています。
(15~24歳:5万4千人、25~34歳:15万1千人、35~44歳:17万4千人、45~54歳:16万3千人、55~64歳:13万3千人、65歳以上:9万9千人)
年齢層を見ると、沖縄県の就業者は比較的幅広い年齢層に分布していることがわかります。最も多い年齢層は30代後半で、この年代の労働需要が感じられます。
このように、産業や職業ごとに年齢層の傾向があることや、沖縄県の労働人口とその分布を把握することでどの労働市場の規模が大きく(または小さく)、業界ごとの中心年齢など見えてくるものがあります。自身の希望する業界・職業、活かせるキャリアの適切な年齢感が少なからず掴めてくるのではないでしょうか。
ただ、移住転職を考えるにあたっては転職タイミング以外にも押さえておきたい情報がいくつかあります。移住をするとなると、当然引っ越し先も決めなくてはなりません。
[参照:e-stat「国勢調査」「労働力調査」、沖縄県「労働力調査」2023年、建設業デジタルハンドブック2024年、国土交通省「最近の建設業を巡る状況について」、農林水産省統計「農業の生産性の向上のためのスマート農業技術の活用の促進に関する法律について」2024年、厚労省 介護労働の現状、JISA情報サービス産業基本統計調査2023年]
沖縄県の地域別・転入者の違い
「沖縄のUIターン転職の傾向」の章で、石垣市の転入転出状況についてご紹介しましたが、この章では沖縄県内全体での転入者数の違いについてご紹介します。 沖縄への移住転職を考える際、転職タイミング(年代)の他にも「どこの地域がいい」のか、なぜ地域に違いがあるのか?といった点も合わせて考えることで、より選択肢や考え方を広げることができます。
沖縄県内の地域別転入者数は、中南部地域と八重山地域が全体的に増加傾向にあり、北部地域は横ばい、宮古地域は近年増加傾向が見られます。
また、令和6年の最新データでは、次の自治体について社会増(※転入と転出の差がプラスの場合を指す=転入超過ともいう)が確認されています。
社会増がみられる自治体と社会増減率(2024年時点)
- 宜野座村:2.15%(県内最高値)
- 伊平屋村:1.27%
- 南城市:1.19%
以下の地域については前年と比較して社会増減率が増加傾向にあり、今後も社会増が予測される自治体です。
- 読谷村:転入者の多さから持続的な増加傾向
- 北中城村・中城村:基地跡地開発の進展が人口増要因
この転入者数の違いの背景としては、次の要素が考えられます。
〇南部地域(那覇市・浦添市・豊見城市など)
- 人口・経済の集積が最も大きく、UIターン希望者の約半数が集中しているとされる
- 県庁所在地である那覇市を中心に行政機能・ビジネス拠点・商業施設・大学が集まり、就職や生活の便が良い
- 家賃・地価が高騰気味ではあるが、若年層の就業機会や都市型ライフスタイルを求める層に根強い人気がある
〇中部地域(宜野湾市・うるま市・沖縄市・北谷町・読谷村など)
- 那覇市中心部よりも地価・家賃がやや抑えられ、車社会であれば通勤範囲として捉えやすい
- 米軍基地やリゾート施設、IT関連企業などが点在し、観光業やサービス業・IT企業への就職を狙う移住者が集まるケースも多い
〇北部地域(名護市・本部町・今帰仁村・東村・国頭村など)
- 自然環境やリゾートホテル、農林水産業など独自の魅力はあるものの、南部・中部ほどUIターン数が増加していないとされる
- 就業機会や公共交通の利便性が限られる一方、リゾートホテル・観光業など特定の職種を志望する人や、「自然豊かな生活」を求める移住者には一定の需要がある
また、地域ごとに転入出の特徴が変わるわかりやすい事例としては「転入者の多い年齢層」のトピックでもご紹介した石垣市があります。同市の転入者数の内訳について見てみると、転入者に占めるIターン比率は6~8割前後と相対的に高く、一方でUターンは2~4割程度にとどまっており、Uターンが主要な人口流入源である沖縄県全体の傾向とは違いがあります。言い換えると、石垣市は沖縄県内でも外部から人を呼び込む力が強い地域といえます。
県全体としての転入者数は、今後2045年推計では沖縄市や那覇市を含む地域で人口減少が予測されているものの、中城村は2045年まで増加が持続するとのデータもあり、石垣市のような離島も含めUIターンにおける需要の差は地域ごとに傾向がありそうです。
[参照:沖縄県公式サイト資料「沖縄21世紀ビジョンゆがふしまづくり計画進捗状況」令和3年度資料、沖縄県公式サイト「令和6年人口移動報告年報」、国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口」、りゅうぎん総合研究所 沖縄県内の市町村の将来推計人口(2022年7月推計)]
沖縄の転職活動における適切な時期を考える
沖縄県のUIターンに関する年代や地域別の傾向をご紹介しましたが、転職におけるタイミングは求人数の増加時期にあわせて行うことも重要です。
沖縄県の求人傾向は職種や業種によって大きく異なります。
例えば、観光業・サービス業では季節や繁忙期に合わせた求人の増減があります。一般的に、夏の観光ピークが過ぎる8月下旬から9月中旬や、12月から1月の年末年始の観光シーズンに向けた準備期間に正社員や長期雇用を見越した採用を募集されると考えて求人を探してみるとよいかもしれません。 一方、IT・エンジニア職やコールセンターなどの事務系業種は、プロジェクトやクライアント対応の需要は通年で発生するため、特定の繁忙期よりも年間を通じた採用が主流といえます。また、長年転職コンサルタントをしている経験からお伝えしますと、経営層やマネジメント層など事業の中核となるポジション、もしくは技術職のように専門性が問われる職務であればあるほど、時期を問わずに募集をしております。
自分の希望する業界の動向をリサーチし、求人数の増加時期をリサーチしたり、企業の繁忙期を避けて落ち着いた時期にコンタクトをとってみるといったことも有効かもしれません。
まとめ
沖縄UIターンにおける年代別の課題や、沖縄県の地域別UIターン傾向、産業・職種別の就業状況、さらに転職市場の動向や最適な転職時期などを総合的にご紹介しました。 転職にあたり、多くの方々はこれまでのキャリアが活かせるのか、年収がどの程度変わるのか、家族の生活環境はどうなるのかといった不安を抱えがちです。
UIターンに関してのお悩みや、今後のキャリア形成については事前の情報収集と専門家への相談が鍵となります。弊社レキサンでは、こうした不安を一つずつ丁寧に伺いながら、あなたの条件や希望に合った求人のご紹介や転職時期のアドバイスも行います。「いつかは沖縄で働きたい」「沖縄に戻りたい」という想いを具体的に進めるためにも、まずはお気軽にご相談ください。
また、年齢や長いキャリアを重ねてから沖縄での転職を成功させた方の過去記事「50 歳の壁」を越えコーカスに転職「SuiSavon-首里石鹸」松尾さんとの語らいで見えたミドル層キャリアチェンジにおける成功の鍵 もぜひご一読ください。